【Q&A】 半地下の車庫を作りたいが

  • 2013/03/12(火) 15:53:44

 【問】 借地上の建物を改築する際土地を半地下状に掘下げて車庫を作りたいと思うのですが、問題ないでしょうか。


 【答】 駐車スペースを設けるため建物の1階の高さを少し上げてその下に半地下になった車庫を作ることがあります。土地が狭い場合はこうでもしないと車庫を確保できないというわけです。

 しかし、この土地が借地であるときは、半地下にすることは、問題がないわけではありません。建物を所有するために借りる土地が借地ですが、借地人が土地を利用できる権限の範囲は、建物所有目的に限定されています。それ以上に、勝手に土地を利用することは、権限外のことになってしまいます。

 土地上に建物を建築するということは、ある程度は土地を掘下げることは当然です。そうでなければ、建物の基礎工事ができないわけですから、どの程度の規模と構造で地下工事をするのかは、地上に建つ建物が木造か、鉄骨か、その構造と規模でおおよそわかることなので、借地契約で定められた建物を建築するために必要な地下工事であれば、その工事は賃貸借契約の範囲内とみなされことになります。

 しかし、昔、木造建物の契約で借地をして、最近建物改築にともなって、地下工事をして車庫にするという場合は、車庫のために地下工作物を設置することが、借地契約の目的の範囲内かどうかは、明確ではありません。

 自動車の保有が一般的となり、自動車所有者は車庫を設けることが義務付けられていることから見て、半地下にして車庫を造ることも土地利用の方法として不当とはいえません。また車庫自体は、建物の基礎部分でこそありませんが、基礎と一体となった建物に一部分であることには違いないので、借地契約の目的に反するとはいえません。

 しかし、他方で、借地人は、借りた土地を正当に保管していなければならない義務があります。半地下とはいえ、地下に工作物を設けることは、当初の借地契約では予想していなかったことでもありますから、この保管義務違反になるおそれもあります。みだりに土地の現状を変更してもらいたくないと思う地主にとっては、契約違反を主張したくなることでもあります。ですから、工事の前に、一度地主と話合ってみることが必要でしょう。話合いの結果、どうしても地主の了解が得られないときは、増改築許可の裁判手続きをとったらよいと思います。

 ところで、ご質問の場合、建物の改築をするわけですから、借地契約に、増改築禁止の特約があるのかどうかも問題になります。土地賃貸借契約書に「建物を改築、増築するときには、地主の承諾を要する」という条項があれば、地主の承諾を得ないと改築工事ができません。無断で工事をすると、賃貸借契約を解除されるおそれがあります。

 このような増改築禁止特約があるときには、いずれ増改築について地主と協議しなければいけないので、そのときに、半地下の車庫のことも了解を取ったらよいでしょう。了解が取れなければ、増改築の許可の裁判手続きをとることができます。

 

東借連常任弁護団解説

Q&A あなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より

 

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【Q&A】 家主から借地契約の終了を理由に借地上建物の明渡請求

  • 2012/04/16(月) 10:14:48

 (問) 私は、借地上の店舗付き借家に住んでいますが、突然不動産業者を介して、「家主から借地契約期間が終了すると、借地契約を解消するとの公正証書を地主と結んでいたので、半年後に借家を明渡して欲しい」との申入れを受けました。

 私は、3年前に家主の了承を得て店舗を改装し、最近やっと事業も軌道に乗り安心していました。このような家主からの明渡請求に応じなければならないのでしょうか。


 (答) 通常地主と借地家主の間で債務不履行などで信頼関係がなくなり、地主から契約解除されると、借地家主は、土地を更地にして無条件で返還しなければなりません。その結果として借家人も建物を明渡さなければならないことになります。いわゆる「親亀転けたら、子亀も転ける」ことになります。

 しかし、地主と借地家主が借家人を追い出すことを意図して公正証書などを結ぶとか、借地人から借家人を追い出すことを目的に故意に地主と契約を合意解約した場合、借家人の契約は存続するといわれています。

 かつて、地上げ屋が借地を買い漁り、地主と馴れ合い、明渡しになった事例もありました。明渡し行為に地主と借地家主が馴れ合っているとの証拠をつかむのは大変困難です。

 今回のお問合せの事例は、借家人が存在していることを知りながら、地主と借地家主とが合意解約することは権利の乱用や信義則違反であり、借家人が明渡しに応ずることはないといわれています。詳細に事例を検討しなければなりませんが、最終的には裁判所で判断を求めることになります。

 

 

全国借地借家人新聞より


以下は、東京・台東借地借家人組合の文章。

 判例は<借地契約が地主と借地人との合意によって解除された場合には、借地上の借家人に明渡しを対抗できない>(最高裁1963(昭和38)年2月21日判決、民集17巻1号219頁)と判示している。

 公正証書による地主と借地人(家主)との合意解除であるから、最高裁の判例からも、借家人に建物の明渡しを主張できない。従って、店舗付き借家を明渡す必要がないことは明確である。

関連記事> 
【Q&A】 突然地主から家屋の明渡しを要求された

【Q&A】 借地上の建物の借家人が地主から突然明渡を求められた

 

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【Q&A】 家主が修繕義務を果たさないときは?

  • 2012/04/02(月) 00:53:37

 【問】 私は戦前からの借家住まいです。建物が古くなって雨漏りなどで困っています。ところが家主は一向に修繕してくれません。どうすればよいでしょうか。


 【答】 民法606条は、賃貸人の修繕義務を定めています。しかし、賃料の額や家主の経済事情などを理由に、修繕を渋るケースがあります。

 そんな時は、借家人は文書=内容証明郵便が有効=で、修繕が必要なこと、破損箇所・状況を知らせて、可能ならば見積りは幾らかも記載した上で修繕を請求することです。

 その際、指定日の希望も書き、その日まで修繕をしてもらえないときは、借家人が修繕費を出して修繕すること、またその費用は、家主に請求することを催告しておくとよいでしょう。

 それでも家主が修繕しない場合は、借家人が自ら業者に依頼して修繕をすることができますし、その費用も家主に請求できます。

 ただ、いつもスンナリ行くわけではありません。そんな時は、裁判所に調停などを申し立てても修繕してもらうのだ、との強い意思を示すことが大切です。ただ、一人では心細いものです。最寄の組合に相談してもらうことが一番です。

 

 

全国借地借家人新聞より


関連記事
 
【Q&A】 備え付けのガス給湯器が故障したが家主が修理をしないときの対処法は

 

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【Q&A】 私道を所有している地主が下水道工事の承諾をしません

  • 2012/03/29(木) 16:43:27

 【問】 私の借地は公道から私道を入った奥にありますが、今度水洗化工事をしようと思っています。ところが、私道を所有している地主が、地代の値上げとか・承諾料とかを要求して下水道工事を承諾してくれません。どうしたらいいでしょうか。


 【答】 下水道整備は地方自治体や政府の重要な施策になっていることはよく知られています。水洗化工事をしようとするとき、自分の土地だけで下水道管の埋設工事が出来ればいいのですが、ご質問のように他人の土地を使わしてもらわなければ工事が出来ないという場合もめずらしくありません。たいていの場合は、私道に下水道管を埋設することについて、近所の方々は了解してくれるものです。しかし、地主から不当な妨害を受けたとき、水洗化工事を諦めなければならないのでしょうか。諦める必要はないというのが結論です。

 借地人は、地主から建物を所有する目的で借地しています。借地上の建物には当然人が居住したり・営業したりするわけですから、地主としては、借地人に対して建物所有が全うできるように土地を貸す義務があります。昔は、下水道がなくともそれが当たり前であったでしょうが、現在は、下水道を引いて水洗トイレを使用することが普通の状況にあります。ですから、地主は、土地を貸すという義務の内容として、借地人が下水管埋設工事をすることに協力する義務があります。

 また、法律は隣地の土地利用について、いろいろな規定を設けています。例えば、塀や建物を作ったり修繕するときは隣の土地を使用することが出来る(民法209条)、袋地となった土地の人は他人の土地を通行することが出来る(民法210条)、一段高い土地の人は隣の低い土地を使って排水を流すことが出来る(民法220条)という具合です。

 私道の奥に居住する人はどうしても他人の土地を利用しなければ日常生活が出来ませんので、こういった法律を置いているわけです。さらに、下水道法という法律には、公共下水道が出来た場合、排水区域の土地所有者はその土地の下水を公共下水に流入させるために必要な配水管その他の排水設備を設置することが義務とされています(下水道法10条)。借地人にもこの義務があるわけです。その場合、他人の土地を使用しなければ下水を公共下水道に流入させることが出来ないときは、他人の土地に排水設備を設置することが出来る(下水道法11条)とされています。

 これらの法律の規定から見ても、地主が下水管埋設工事を拒否することは法律が認めていません。地主がどうしても承諾しないときは、裁判所に、承諾を請求したり、工事の妨害を禁止したりする法的手続きをとることが出来ます。

 

東借連常任弁護団解説

Q&A あなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より


(参考) 
 【判例紹介】 地主は借地人に下水道敷設につき承諾義務を負うとされた事例東京高裁平成9年8月30日判決、判例タイムズ1998年10月25日号134頁以下)

 

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【Q&A】 7割の地代値上げ 適正な地代とは?

  • 2012/03/26(月) 16:41:40

 (問) 私は、祖父の代から借地に住んでいます。先日、地主から手紙で地代を16年も据え置いたからと言って7割近くの値上げ請求が来ました。あまりに大幅な値上げで応じることができません。どう返事をしたらよいか困っています。また適正な地代とはどのくらいか教えてください。


 (答) 当然、地代は貸主・借主合意で決めるものですが、最高裁判所事務局総局が平成3年12月に出した「民事調停の適性かつ効率的な運用に関する資料」の中に「最終合意賃料が公租公課の2〜3倍に収まっているときは、加減要素としては考慮しない」つまり、地代はその土地にかかる固定資産税等の公租公課の2〜3倍の範囲なら適正と言えるということです。

 これで いけばあなたの今の地代は、固定資産税等の4倍近いのですから適正地代の範囲と言えません。従って、このことを地主に示して話し合うことが必要です。また、長い間値上げしなかったのは、地主が値上げの必要がなかったとも取れるので、あくまでも固定資産税などの公租公課との関係を中心に交渉することをお勧めします。

 尚、現在は毎年地価が下がっている状況の中であまりに高い地代については地代の値下げを要求することもできます。そのために地方自治体の証明する該当土地の「固定資産税額」をよく調査し、地主を説得できる資料をもって交渉にあたることが必要です。詳しくは、最寄の借地借家人組合へ相談するとよいでしょう。

 

 

全国借地借家人新聞より


参考記事
 屐Q&A】 固定資産税台帳を用いて借地人にも適正地代を計算することが出来るか

借地借家人へ固定資産課税台帳公開 (東京・台東)

地代の値上げ(相続税路線価から地代を計算してみた) (東京・台東区)

地代を値下げ(固定資産税路線価から地代を計算してみた) (東京・台東区)

 

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【Q&A】 借地権の譲渡

  • 2012/03/09(金) 00:24:50

 【問】 転勤のため現在の建物と借地権を売りたいのですが、その際、どのような点に注意したらよいでしょうか。まだ地主には何も話していません。


 【答】 ご質問内容からみますと、土地を借りて建物を建築して住んでいたところ、転勤することになり、現在住んでいる建物と借地権を売ることになったようです。

 このように建物所有目的で土地を賃借した後で、借地権を第三者に売ることになった場合、地主との問題があります。最近は、借地権譲渡には、必ず地主の事前の承諾を要するとの条項が契約書に記載されている場合が多いのでご存知とは思いますが、借地権譲渡に当たっては地主の承諾が必要です。ただし、このように地主の事前承諾条項のない場合にも承諾を得なければならないと法律は定めています(民法612条)。

 建物を売買する場合は、通常は、建物とともに借地権も譲渡されますので、地主の承諾が必要になるのです。地主が借地権譲渡について承諾しない場合、借地人は借地権の譲渡の途がないのかというとそうではありません。このような場合、借地人は次のような方法をとることができます。代諾許可といわれるものです(借地借家法19条)。すなわち、借地人が借地上に存する建物を第三者に譲渡する場合、地主を相手方として、借地所在の管轄裁判所に対し、「地主の承諾に代わる許可」を求める申立てをすることができます。

 代諾許可の要件は次のとおりです。

(1) 第三者が借地権を取得しても、地主に不利となる虞れがないのにかかわらず、地主が承諾しない場合です。借地権の譲受人は特定していなければなりません。「不利となる虞がない」かどうかは、第三者の資力が十分で地代の支払いが間違いなくされることが必要です。土地・建物の使用方法が社会常識上普通になされる者であるか否かも考慮して判断されます。

(2) (1)の要件を満たした場合でも裁判所は許可するにあたて、ー效肋魴錣諒儿后↓⊆效録佑忘盪詐紊竜詆奸覆い錣罎詭承曾餞肯繊砲鯡燭犬襪海箸できることになっています。財産上の給付は、鑑定委員会の意見を聴いて決定されます。その額は事情により相違がありますが、借地権価格の約10%程度と考えてください。

(3) 地主は借地人が許可の申立をした場合、自らが借地権の譲渡を受ける途も開かれています。地主からこの申立があった場合には、裁判所は地主に優先的に借地権買戻しを認めていますが、その場合の価格は、第三者に譲渡する場合から財産上の給付分を差し引いたものとなります。

 (*)裁判所の代諾許可が認められた場合、6ヶ月以内に借地権者が建物を譲渡しないとは、その効力を失う。ただしこの期間は、、その裁判において伸張し、又は短縮することができる(借地借家法51条)。

 

東借連常任弁護団解説

Q&A あなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より

 

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【Q&A】 借地上の建物の賃貸借

  • 2012/03/07(水) 00:07:14

 【問】 家計の足しにしようと思い、建物の一部を家賃を取って人に貸しましたが、地主は無断又貸しで契約違反だから承諾料を払えといいます。払わなければならないのでしょうか。


 【答】 結論からいいますと、承諾料は、一切払う必要はありません。それは、建物の一部(又は全部)を人に貸すことが、地主の主張するような無断転貸には当たらないからです。

 借地人は、地主から、賃貸する目的物は、土地であり、その土地上に建物を建築所有して、使用収益することになりますが、あくまでも目的物は土地に過ぎません。

 したがって、借地人が、土地の一部を他人に貸すならば、それは土地についての転貸というになり、地主の承諾を得なければなりませんが、その土地とは別個の不動産である建物は、地主の所有でなく、借地人の所有するものですから、借地人が自ら所有するものを他人に貸したとしても、なんら地主に文句を言われる筋合いはないのです。

 たしかに、土地と建物は、別個といっても建物を借りた人が建物を使用するときには、必然的に、建物の下の土地を使うことになったり、また、建物の周りの土地を通行や花壇に使うこともあるでしょうが、それは、建物賃貸に伴う土地の利用に過ぎず、土地自体を目的とした使用ではありませんから、土地を転貸したということにならないのです。

 借地人は、借地上の建物を、自分で使おうが、また、建物全部又は一部を他人に貸そうが、それは、自ら所有するものの利用方法の問題であり、地主にとやかく言われることはないのです。

 この建物の他人への賃貸がいいのなら、建物の他人への譲渡も、自ら所有するものの処分だからかまわないと思われるかもしれませんが、後者の場合、建物を材木として譲渡するなら別ですが、そうでない場合は、当然に、借地権を伴って譲渡されることになりますから、この点において地主の承諾が必要になるのです。

 したがって、借地人としては、地主の承諾を得ずに借地を有効に利用したいならば、借地上の建物を他人に貸して、家賃収入を得るという方法をとることになります。

 ところで、ご質問の場合、何のかんのといって承諾料を請求してきているようですが、いまだに、地主の中には、地主は土地を持っているがためにえらいと思い、他方借地人は地主から土地を借りているために卑屈になって、いわば、封建的な身分関係のような前近代的なことが行われています。借地関係は、地主は土地を貸す対価として地代を得ているのであり、他方借地人は土地を借りる対価として地代を支払うという対等の当事者の契約関係であり、借地人として、何らお世話になっていなと正当な主張をすべきであり、安易に承諾料などといって金を地主に支払うことはやめなければなりません。

 

東借連常任弁護団解説

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【Q&A】 相続と名義書換

  • 2012/02/24(金) 02:30:16

 【問】 父親が死亡し、息子の私が相続しましたが、地主は契約書を書換えるから名義料を3.3崚り5万円払えといいます。契約書は地主側も先代の名前になっています。


 【答】 わが国では建物と土地は別個の不動産として取扱われていますので、借地上に建物があるときには、建物と借地権それぞれが相続の対象となります。借地権は、財産権の一つとして被相続人(父親の)財産の一つを構成することは間違えありませんので、借地権を相続人が取得したときに地主との関係でどのようなことが問題になるかを考えておくこととします。

 親が死亡しますと相続が開始されます(民法882条)。相続開始によって死亡者(父親)の有していた法律上の地位が当然に相続人に移る効果が発生します。このように死亡した者の法的地位が、一体として相続人に移転することを包括承継といいます。したがって、相続人は死亡者の権利・義務を死亡した時点から承継することになり、死亡者と同じ立場に立つということになります。たとえば売主の地位、買主の地位、本人の地位というものを承継するということになるのです。

 では、借地権者が死亡した場合、借地権を相続した相続人は地主との関係でどのような地位に立つのかということを考えて見ましょう。先ほど述べましたように、相続は死亡者の権利・義務を包括承継しますので、死亡者が地主に対して有していた権利・義務を一切引き継ぐことになります。

 別の言葉で言いますと、土地賃貸借契約の当事者である地主とあなたの父親の賃貸借契約に伴う権利・義務、たとえば地代支払義務、賃貸借期限等が、そのまま相続人であるあなたの権利・義務となるということです。したがって、相続人のあなたは父親が地主に約束した地代支払い等をしておれば、地主から借地人ではないから地代は受け取れないといって、土地を返してくれせという請求をはねつけることができるのことは勿論、父親が死亡したというので相続人が借地権を譲り受けたので承諾して欲しいと求める必要もありません。

 ご質問では、地主は名義書換料を3.3崚り5万円払えと言っているようですが、これまで述べてきたことから明らかなように、父親が死亡したことによってその時点から、父親と同じ地位をあなたは取得しているので、借地権を第三者に譲渡することに伴い地主から名義書換料の支払いを求められるのと異なり、借地権を相続した場合は名義書換えの問題は発生しませんので地主の要求を拒否することができます

 このように、地主の中には、法律上なんら地主の承諾を要しない場合にも、承諾料を請求する人がおり、ひどい場合には、先代の地主が死んで新しく地主になった相続人が、借地人に対し、「借地契約は、先代の地主とであっ、て自分は契約していないから、名義書換えをするから名義書換料をくれ」と請求することがありますが、これもまったく問題になりません。

 

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【Q&A】 家賃の値下げと供託

  • 2012/02/16(木) 11:15:26

 (問) 私はテナントビルの13坪の店舗を月額家賃18万円で賃貸し、商売をおこなっています。最近の不況で家賃の負担が重く、月額家賃を13万円に値下げして欲しいと、家主に交渉していますが、納得してもらえずに13万円で供託しようと法務局へ相談しましたが、供託できないと伺いました。ちなみに周辺の家賃相場は、坪当たり月額1万円ですので、家賃の値下げ要求は合理性があると思いますが、いかがなものでしょう。


 (答) 家賃の減額は、家主の合意又は、裁判所の判決や和解で確定しなければできません。家賃の供託手続きは、確定家賃を家主が受取を拒否した場合にしか出来ず、供託額は確定家賃で行います。

 ご相談の方は、月額18万円が合意家賃であり確定家賃です。したがって、18万円の家賃でしか供託することは出来ません。その場合でも供託手続きは、家主が現行家賃の受取を拒否した場合に限られます。

 仮に、法務局が月額13万円で供託を認めた場合であっても、家主から家賃の一部不払いとして訴えられますと、契約解除の理由とされます。

 家賃が、周辺相場より高く、月額13万円が相当額であったとしても、家主との間で合意するか、裁判所で調停し和解するか、家賃減額訴訟を行い、裁判所で確定する以外には、減額できません。

 したがって、家賃を減額して供託することは、賃借権を守るためにも出来ません。

 

 

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【Q&A】 地上げ屋の対処 どうしたらよいか

  • 2012/02/08(水) 09:51:00

 (問) 私の賃借している土地(底地)が地上げ屋に買取られ、借地権(家屋)を売るか、土地を買取るかと求められて悩んでいます。


 (答) 新たな賃貸人なのかを土地の謄本等を提示させて確認し、地代の支払い方法も確認することが必要です。新賃貸人が確認できない場合や地代の受領を拒否された場合は、供託することになります。

 地上げ屋から家屋を売るか買うかといわれても恐れることありません。あなたが賃借人(借地権者)であること。さらに、家屋の保存登記がしてあれば土地が第三者に売られても対抗力があるので、臆することなく整然と対応することが大切です。

 土地の買取を検討する場合は、相手の提示額を考慮するのではなく、自らの経済状況を踏まえて家族と話し合い、生活に無理のない金額を提示し、協議が整わない場合は直ちに交渉を打ち切ることです。何も躊躇することはありません。何故ならあなたは、買取をお願いされている立場であり、あなたの提示する金額で折り合わない場合は、売買協議を打ち切ることは当然で、商法の原則です。よって、賃借人として地代の支払いを継続することを伝えれば、事は完了となります。

 従って長く話し合うことは必要ありません。長時間居座られて嫌な思いをするような場合は直ちに警察に連絡することが大切です。最も重要なことはイエス、ノーをはっきりと伝えて毅然と対応することです。

 

 

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【Q&A】 地主が土地を売却した場合

  • 2012/01/30(月) 10:17:21

【問】 借りている土地を買ったという人から直ちに立退けと通告されました。びっくりして地主に問い合わせると、たしかに売ったっとといいます。どうなるのでしょうか。


【答】 ご質問からして建物所有目的で土地を賃借していることを前提に考えます。

 あなたが新所有者の主張をのまなければならないかは、あなたの有している借地権が対抗力のあるそれであるかにかかっています。

(一) 借地の場合に対抗力があるとされるためには、借地権の登記がしてあること(民法177条、605条)、または、借地権の登記がないとしても、借地人が借地上の建物を登記していること(借地借家法10条》が必要です。実際上は、借地権の登記をしている例はほとんどなく、借地上にある建物の登記がなされているかどうかで借地権の対抗力の有無が決定されるといって過言でありません。

 (1) 建物の登記は「始めてする所有権の登記」いわゆる保存登記(不動産登記法100条)や所有権移転登記がこれにあたることは問題ありません。不動産の表示登記(建物を新築したものは1か月以内に表示の登記の申請をする義務が課せられる。同93条》だけの場合も、新地主に借地権の存在に注意させるという点からみて登記にあたるとされています。

 (2) 登記は新所有者が旧所有者から所有権移転登記をする前にしておかなければ対抗力はありません。

 (3) 登記はされているものの借地人と建物の登記名義人が異なる場合については注意を要します。子名義の登記では対抗力がないとしていますので、借地人と建物名義人を異にする登記は避けた方が無難でしょう(最高裁判所昭和41年4月27日判決)。

(二) 建物の登記がない場合でも、新所有者が借地権を認めてくれる場合は問題ありませんが、認めないときには新所有者のいうなりに借地権者は出ていかなければならないかといいますと、必ずしもそういうことはありません。最高裁判所も以前は登記がない場合は対抗力なしとして借地人を負かせていましたが、新地主が借地権の存在を知りながら借地人を立退かせることを意図し、借地人が建物の保存登記をしようとしたときに旧地主がこれを妨害したことなど、新地主の所有権を取得する目的が著しく悪いときには登記なくして借地権の対抗力を認めています(最高裁判所昭和38年5月24日判決)。

 しかし、いずれにしても借地上に建物を所有している人はきちんと登記しておく心掛けが必要です。

 

東借連常任弁護団解説

Q&A あなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より

 

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【Q&A】 借地借家法施行前に設定された借地権が施行後に譲渡された場合の存続期間は

  • 2012/01/23(月) 10:14:25

(問) 私は、昭和49年に建築した借地上の建物(註1)を地主の承諾をえて家屋所有者から平成11年に購入しました。
 この時の借地契約は、旧法が適用されるのでしょうか。また、借地期間はいつまでになるのでしょうか。


 (答) 平成4年8月1日に現行の借地借家法(新借地借家法)が施行されました。それ以前には、借地契約は借地法、借家契約には借家法が適用されていました。

 新借地借家法は、「土地の利用について双方の必要性の度合い」「利用状況」「契約の経緯」のほか、新たに「金銭を提供すること」(立ち退き料)によって正当事由を補完することが加わりました。

 また(さらに)、定期借地制度が加わりました。

 お問合せの方は、平成11年に家屋を購入し、借地契約を締結されておられますので、新借地借家法が適用されることになります。

新借地借家法による借地期間は、堅固なる建物の場合は、30年以上、更新後も30年の期間となります。木造家屋の場合は、20年以上で更新後も20年の期間となります。

大借連新聞 4月号


 ここからの文章は東京・台東借地借家人組合が記述したものです。


 大借連新聞4月号では以上のように掲載されていた。

 5月号の「お詫びと訂正」で「新借地借家法の適用される借地契約の場合の借地期間の回答が、誤って旧借地法の契約期間で回答していました。改めて新借地借家法が適用する借地契約期間について回答させて頂きます」ということで、(新借地借家法)が追加され、「また」が→「さらに」へ変更されている。

また、以下の説明が、
新借地借家法による借地期間は、堅固なる建物の場合は、30年以上、更新後も30年の期間となります。木造家屋の場合は、20年以上で更新後も20年の期間となります。

次のように加筆訂正された。
 「新借地借家法による借地期間は、従来堅固な建物と非堅固な建物に区別されてきましたが、新借地借家法の適用される借地では堅固・非堅固を問わず一律となりました。
 具体的には、/卦契約の場合は30年以上の契約になります。ただし、合意がない場合は、30年になります。更新後の存続期間は原則として最初のの更新20年となり、その後は10年となります。
」(大借連新聞 5月号)


 問題点は、上記のことではない。「借地借家法」の施行前(平成4年8月1日)に締結した借地契約の場合で、「借地借家法」(新法)の施行後に借地権の譲渡、又は借地権を相続する場合は、即ち借地人の交代があった場合の存続期間・更新後の期間はどうなるのか。

 その場合、「旧借地法が適用」されるのか、或いは「新法(借地借家法)が適用」されるのかが問題である。

 借地人の権利に関することで重要である。旧借地法が適用されずに借地借家法(新法)が適用されると、借地人の権利は弱められる(註2)。

 大借連新聞では、借地借家法(新法)が適用されると解説されている。果たして、そうなのだろうか。

 「明解Q&A 新借地借家法」(三省堂1992年版)では、「Q18 借地権を譲渡・相続する場合はどうなるか」で新法施行前に借地契約を締結している場合の譲渡・相続に関しては、次のように「Q&A」で説明している。

【Q18】 新法施行前に借地契約を締結しています。新法施行後、借地権を譲渡する場合は、存続期間や更新後の期間はどうなるのでしょうか。また、借地権を相続する場合はどうなるのでしょうか。

【回答】 新法施行後、借地権を譲渡しても、その借地権の内容は従来の契約がそのまま引き継がれ、存続期間や更新後の期間についても旧法が適用されます。借地権を相続する場合も同様です(「明解Q&A 新借地借家法」56頁)。

【解説】►借地権の譲渡  新法施行後、借地権を譲渡する場合、新法施行前に締結された契約の内容がそのまま効力をもちます(法附則4条)。存続期間も更新後の期間も従来の契約のままで、何ら変更されることはありません。

 もっとも借地権の譲渡に際して、存続期間を譲渡のときから20年とか30年とかに延長することはできます。・・・・・また借地権の譲渡に際して、更新後の期間について「これからは新法による」と定めることはできません。更新後の期間について新法の規定は旧法よりも明らかに不利ですので、無効となります。再び借地権を譲渡しても同様です(「明解Q&A 新借地借家法」57頁)。

【解説】►土地の譲渡・相続 新法施行後に、地主が土地を譲渡したり、相続により地主が変わる場合も同様です。新法施行前に締結された契約の内容がそのまま効力をもち、旧法の正当事由の規定が適用されます(「明解Q&A 新借地借家法」90頁)。


地震に伴う法律問題」(近畿弁護士会連合会編(1995年3月16日初版) 社団法人商事法務研究会」でも同様の問題が「Q&A」で取扱われ、次のように解説されている。

【Q2】私の借地権は、昨年(新法施行後)に前の人から譲渡を受け、地主の承諾を得たものですが、どちらの法律が適用されますか。

【A】 滅失と更新については、借地権の「設定」が新法施行前か後かで適用が分かれます。その「設定」とは、当初の契約時点のことです。その後に、更新が繰り返されたり、借地権の譲渡とか相続があっても当事者が変更しても、当初の契約時点をいいます(一問一答・新しい借地借家法19頁商事法務研究会)。

 したがって、新法施行後に譲渡を受けた借地権でも、当初の借地人の契約が新法施行前ならば旧法の適用となります(「地震に伴う法律問題」2頁)。


 「借地借家法」の改正に際し、法務大臣談話(1991年9月20日発表)が出された。
「特に、現在ある借地・借家関係には、新法の契約の更新及び更新後の法律関係に関する規定を一切適用しないことを法律自体で明らかにしており、現在ある借地・借家関係が新法になっても従前と変わらない扱いを受けるようにしている。」と明確に施行前に設定された借地契約の「更新」及び「更新後の法律関係」に新法が適用されないことを明言している。これらは「借地借家法」の「附則」(法規定)で明確にされている。

 「また、更新の際に、「新法が成立したら、それに応じて契約を改める」ということをあらかじめ特約することを貸主側が要求する例もあると報道されているが、このような特約をすることは法律上許されていない。したがって、貸主からそのようなことを要求されても、それに応じる必要はないし、仮にそのような特約をしてしまっても、その特約は、無効である。」(法務大臣談話)。

 平成3年8月30日の衆議院法務委員会で次にように政府答弁している。
「この法律の施行前にされた借地契約についてはすべて従前の規定が適用される。これをこの借地関係が相続されて相続人に承継され、あるいは他に譲渡されて移転するというようなことがございましても、借地関係は同一性を持って移ることになりますので、やはり旧法の規定に従って更新等が規律されることになる。」

 「新法には、新法が施行される時までに既にされている貸し借りには契約の更新や更新後の法律関係に関する新しい法律の規定は適用されず、これまで通りの扱いになるということが規定(付則)のなかに明記されています」(「新しい借地借家法のあらまし」法務省民事局作成)。

 「借地借家法附則4条但書」により、「廃止前の建物保護法に関する法律、借地法及び借家法の規定により生じた効力を妨げない」として、新法施行前に設定した借地権の存続期間については、「借地借家法」は適用されず、旧「借地法」が適用される(経過措置の原則)。

 また、更新に関しては、「借地契約の更新に関する経過措置」により「法律の施行前に設定された借地権に係る契約の更新に関しては、なお従前の例による」(借地借家法附則6条)として、「借地借家法」は適用されず、これも旧「借地法」が適用される。

 従って、借地の存続期間・更新後の借地期間は、
 〃戚鵑砲茲辰董鉄筋コンクリート構造建物や鉄骨構造建物等の堅固建物の所有を目的とするものでは30年以上、それ以外の木造、軽量鉄骨等の非堅固建物所有を目的とするものについては20年以上の存続期間とする(旧借地法2条2項)。

 ∨…蟾洪靴両豺腟擇啖戚鷭颪鮑鄒したが契約期間を定めなかった場合は、借地権の存続期間は堅固建物の場合は30年、その他の建物の場合は20年と法定される(旧借地法4条・5条・6条・7条)。

 △遼…蠎效牢間より短い期間を定めた時は堅固な建物所有目的のものについては60年、その他の建物所有目的のものについては30年の存続期間となる(最高裁昭和44年11月26日判決)。

 関連記事【Q&A】 堅固建物所有の借地契約の更新時に期間15年の契約をしたが、その契約期間は果して有効なのか


(註1) 建物を売買する場合は、通常、建物と共に借地権も譲渡される。

(註2) 具体的には、契約の更新後に借地人の建物が滅失(地震・津波・台風などで倒壊或いは火事で焼失)した場合、旧借地法では増改築禁止の特約があった場合でも、地主の承諾がなくても再築は可能である。
 (参照【Q&A】 増改築を制限する特約がある場合、火災後の再築に地主の建替承諾は必要か

 しかし、新法は更新後の場合は増改築禁止特約の有無に拘らず、地主の承諾を得ずにした建物の再築は常に解約原因となる。しかも、地主のこの解約請求には正当事由が必要ではない。解約の申入れ後、借地権は3か月後に消滅する(借地借家法8条)。この場合、借地人からの建物買取請求権も認められていない。

 

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【Q&A】 息子名義で借地上建物の建替え

  • 2012/01/11(水) 00:26:18

【問】 私が借地している土地上の建物を息子がローンを借りて建替えることにしました。地主との関係や税金はどうなるのでしょうか。


【答】 息子といえども土地の賃貸借契約上は第三者になりますから、地主との関係では息子さんはあなたから借地権の譲渡を受けるか又貸し(転貸)を受けるかすることになります。いずれの場合も、あらかじめ地主の承諾を得なければなりません(民法612条1項)。

 また、建物を建替えるわけですから、もしあなたと地主との間の借地契約に増改築禁止の特約があれば、やはりこの点についても地主の承諾が必要となります。特約がなければ、自由に改築できるわけですから、借地権の譲渡又は転貸の承諾さえ得ておけば問題はないことになります。

 したがって、まずあなたとしては地主と交渉して、あらかじめ地主の承諾を得るよう努めることが大切です。その際一定の承諾料を要求されるのが普通でしょう。金額は双方の話し合いで決めるべきもので、法律でいくらと規定されているわけではありません。

 地主の承諾が得られないか、金額で話がつかない場合は、承諾に代わる許可を裁判所に求めることができます。その場合、増改築禁止の特約があるときは、借地権譲渡又は転貸許可の申立(借地借家法19条)と増改築許可の申立(借地借家法17条)を併合して申立てることになります。増改築禁止特約がない場合は、借地権譲渡又は転貸許可の申立だけをすることになります。

 地主との関係では、地主の承諾ないし地主の承諾に代わる裁判所の許可を得ないで、勝手に借地権(つまり借地上の建物)をたとえ息子といえども第三者に譲渡又は転貸しますと地主から借地契約を解除される恐れがあります。

 次に税金ですが、通常の個人間の借地権の無償の譲渡、転貸については、普通、贈与税が課税されます。しかし親から子が、その土地を使用貸借によって借受け、その土地に建物を建築した場合には、特例として贈与税はかからないことになっています。

 その場合、その貸借が使用貸借であることを確認するため、「借地権の使用貸借に関する確認書」(様式が決められています)によって、使用貸借による借受者、借地権者、土地所有者がそれぞれ事実を確認し、税務署に提出することになっています。

 

東借連常任弁護団解説

Q&Aあなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より

 

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【Q&A】 私道の通行

  • 2011/12/19(月) 00:16:28

【問】 私の借地は私道の行き止まりにあります。現在、地主が地代値上げを請求し、認めなければ公道の出入り口に鉄柵を作って車の出入りを禁止するといっています。何とかならないでしょうか。


【答】 この私道は、地主が所有しているものと思われます。地主は、借地人に私道の行き止まりにある土地を貸したのですから、土地賃貸借契約に基づき当然その私道を通行させる義務を負っています。私道の通行を認めなければ借地を宅地として使用することができないわけですから、これは当然のことです。(註1)

 このことについては、最高裁判所の判決(昭和44年11月13日)が次のように述べています。
 「公道に面する一筆の土地の所有者が、その土地のうち公道に面しない部分を他人に賃貸し、その残余地を自ら使用している場合には、所有者と賃借人の間において通行に関する別段の特約をしていなかったときでも、所有者は、賃借人に対し賃借に基づく賃貸義務の一内容としてこの残余地を賃貸借契約の目的に応じて通行させる義務がある」

 次の問題は、通行権の内容として、車を通行させることができるかということです。現在、自動車の保有率が高まり、家庭にとってなくてはならないものになっているのですから、車による通行権はあるというべきです。この種の争いは、地主と借地人という関係にはない土地所有者と隣地土地所有者との間でよく起こるトラブルですが、その裁判例は具体的なケースによって結論が違っています。車が通行する幅があるかどうか、私道の利用状況はどうか、現状を変更しなくて車が通行ができるか、隣地の不利益はどうかなど、様々なことを考慮して、車の通行が認められるかどうかが判断されています。(註2)

 しかし、ご質問の場合地主との関係ですし、今まで車で通行していた実績があるわけです。また、車の通行によって格別地主に損害が発生するわけでもありません。地代増額要求の手段として通行を禁止しようとしている事情を見れば、車による通行が認められるでしょう。

 では、車の出入りを認めるから私道の地代を支払えと言われたらどうでしょうか。地主が借地人に対して私道の通行権を認めるのは、私道を使わなければ利用できない宅地を貸したことによって発生する地主の義務ですから、私道の地代を払うか払わないかとは関係ありません。私道の地代を払わなくても地主には私道を通行させる義務があるのですからです。

 

東借連常任弁護団解説

Q&Aあなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より


(註1) 【判例】 公道に面する一筆の土地の内公道に接しない賃借人に通行権を認めた事例

(註2)最高裁判所は平成18年3月16日判決で、通行権に関して新判断を下した。「自動車の通行を前提とする民法210条(*)の通行権の成立を否定した原審の判断には、判決に影響を及ぼす明らかな法令違反がある」として自動車の通行権を否定した東京高裁判決を破棄し、再び東京高裁へ差戻した。即ち、民法210条の通行権は自動車の通行を前提にしたものという解釈に改められた。

(*)民法210条「他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、行動に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる」

(註)は東京・台東借地借家人組合

 

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【Q&A】 改築と承諾料

  • 2011/12/12(月) 00:31:00

【問】 建物が古くなったので建て直したいのですが、地主が莫大な承諾料を要求しています。地主の要求する承諾料を支払わなければ建て直しはできないでしょうか。


【答】 借地契約は、地主と借地人との間の土地を目的物とする賃貸借であり、地主は借地人に対し、土地を有効に使用収益できるようにする義務があります。借地人がその土地上に借地契約の目的に従い、いかなる建物を建築したり、また、その建物の全部または一部を改築したり、さらには、その建物に増築したりすることは、原則として自由です。

 しかし、借地契約において、建物の増改築をする場合は地主の承諾を要するという特約がある場合については、裁判所はこの特約は有効としています。

 ご質問の場合、増改築禁止の特約がなければ、地主の承諾は必要なく、自由に改築できるのです。したがって、承諾料を支払う必要はまったくありません。

 他方増改築禁止特約があったり、そうでなくとも例えば堅固でない建物から堅固な建物に改築するような借地条件を変更する場合には地主の承諾が必要になります。地主があまりにも莫大な承諾料を要求して、到底話し合いの余地がない場合には、裁判所に地主の承諾に代わる改築の許可の手続きを取られたらよいでしょう。

 この手続きは、増改築禁止の特約がある場合は、土地の通常の利用上相当な増改築について、地主の承諾しない場合に認められるもので、裁判所は、その申立に対し、借地権の残存期間、土地の状況、借地に関する今までの経過その他一切の事情を考慮して、当事者間の公平を図るため、必要あるときは、借地内容を変更したり、財産上の給付を命じることによってなされます(借地借家法17条)。

 非堅固建物から堅固建物に改築するような場合も、防火地域の指定や付近の利用状況の変化その他の事情が生じた場合に認められるもので同様な手続きを取ることができます。

 右の借地条件の変更というのは、存続期間を延長したり、あるいは、地代を改定することであり、財産上の給付というのは、承諾料として、いくら支払わせるかということです。裁判所では、増改築許可の場合、普通更地価格の3%の金銭給付を命じており、非堅固建物から堅固建物への条件変更の場合、普通更地価格の10%が命じられています。 

 

東借連常任弁護団解説

Q&Aあなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より

 

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【Q&A】 借地契約書に特約で「建物使用の用途制限」がある

  • 2011/12/05(月) 11:40:45

【問】 借地契約書で、土地上の建物を居宅として使用するとの契約内容になっています。この度、店舗として使用したいと思いますが、地主は承諾しません。どうしたらいいでしょうか。 


【答】 借地契約は、本来、賃貸借の目的物は土地であり、その土地上の建物の所有者は、借地人ですから、建物の使用方法については、借地人の自由であってよいはずなのですが、借地借家法では、借地条件の1つとして建物の用途が入りましたので、今後は借地契約書上に、建物の用途についての制限が加えられるケースが増えてくるものと思われます。

 ところで、これまで、建物の種類について、非堅固建物所有から堅固建物所有へ変更する場合については借地条件の変更に当たるものとして地主の承諾を必要とし、地主の承諾が得られないときには、借地人が裁判所に借地非訟手続の申立をし、裁判所が地主に代わって許可を与える制度がありました。

 今度は、建物の非堅固から堅固への変更の場合だけでなく、建物の種類、構造、規模、用途についての制限がある場合に、その変更につき地主の承諾が得られない場合に、借地人は、裁判所に借地非訟手続の申立をして、裁判所が地主に代わって許可を与える制度になりました(借地借家法17条1項)。

 そこで、借地契約書に、ご質問のような用途制限がある場合、借地人が建物を居宅使用から店舗使用に変更しようとするときには、あらかじめ、地主にその変更についての承諾を求める必要があり、地主が承諾をしなかったり、高額な承諾料を請求するような場合には、借地人は、裁判所に借地非訟手続を申立てる必要があります。もし、この借地非訟手続をとらずに、無断で建物の用途を変更しますと、借地契約違反として契約を解除され、借地権を失う恐れがあります。

 この借地非訟手続を申立てますと、裁判所は、当事者双方から事情を聴き、用途変更の必要性の有無・程度・地主への影響等を判断して許否の決定をすることになります。

 ところで、裁判所が許可を与える場合の財産上の給付(承諾料)については、今後裁判所の決定例の蓄積の中で一定の基準が形成されていくものと思われますが、一般的には、建物の種類、構造の変更許可の場合は増改築許可の場合よりも、低額になると思われます。

 なお、この制度は、既存の借地契約に用途制限がある場合にも適用されますので、用途変更をする場合には、改めて借地契約書を確認してください。

 

東借連常任弁護団解説

Q&Aあなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より


借地条件の変更及び増改築の許可

第17条 建物の種類、構造、規模又は用途を制限する旨の借地条件がある場合において、法令による土地利用の規制の変更、付近の土地の利用状況の変化その他の事情の変更により現に借地権を設定するにおいてはその借地条件と異なる建物の所有を目的とすることが相当であるにもかかわらず、借地条件の変更につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、当事者の申立てにより、その借地条件を変更することができる。

 増改築を制限する旨の借地条件がある場合において、土地の通常の利用上相当とすべき増改築につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、その増改築についての借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。

 裁判所は、前2項の裁判をする場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、他の借地条件を変更し、財産上の給付を命じ、その他相当の処分をすることができる。

 裁判所は、前3項の裁判をするには、借地権の残存期間、土地の状況、借地に関する従前の経過その他一切の事情を考慮しなければならない。

 転借地権が設定されている場合において、必要があるときは、裁判所は、転借地権者の申立てにより、転借地権とともに借地権につき第1項から第3項までの裁判をすることができる。

 裁判所は、特に必要がないと認める場合を除き、第1項から第3項まで又は前項の裁判をする前に鑑定委員会の意見を聴かなければならない。

 

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【Q&A】 借地上建物の修繕

  • 2011/11/25(金) 01:23:15

【問】 雨漏りがひどいので、屋根を瓦葺からトタン葺に全面修繕しましたが、地主は無断でやったので、契約違反だから明渡せと言います。どうしたらよいでしょうか。


【答】 借地契約があり、借地関係が続いている間は、地主は借地人に対し、その土地を利用させる義務を有しているのであり、借地人としては、その対価として地代を支払っているのですから、その土地を契約に定めた用法に従って使用収益をすることは何ら差支えありません。

 借地契約における賃借の目的物は土地であり、その上に建っている建物ではないのですから、借地人が土地の形状に著しく変更を与える修繕したような行為をしない限り、建物についてどのような工事をしても、地主に対する保管義務に違反するものではないことは明らかです。

 ご質問のように、借地人が自己所有の建物について修繕したことについて、無断だとか、契約違反だから、明渡せというのはまったくの筋違いです。

 このように、借地人が自己所有の建物について、どのように工事をするかは自由です。そして、借地権が法定更新によって継続するためには建物が存続していることが必要ですから、借地人は普段から建物に手を入れ、良好な状態に維持管理していくことは、借地権を維持していくためにも重要なことです。

 借地人が自己所有の建物について修繕することについては自由なのですが、問題は、借地人が大修繕を加えたがために、今までの建物であれば朽廃の状態に達したであろう時期に、朽廃に達しないという場合です。このケースは、建物が老朽化し、通常の修繕では間に合わず、大修繕をしたような場合をいうのです。

 この問題については借地人が大修繕を加えても、通常加えられるべき程度の修繕を加えてもなお朽廃すべかりし時期に、借地権は消滅するという考え方もあります。

 何もせずに朽廃を待つよりは大修繕により建物の寿命が延びた場合であっても、建物の同一性を失う程度に至らないものの場合、つまり改築にあたらないものである限り、現実に大修繕後の建物が朽廃する時期まで、借地権は存続すると考えるべきです。

 これは、借地法が建物の存続する限りは借地権を存続させようとする趣旨で制定されているものであり、借地法中にも、修繕に関する規定はなく、当然建物の修繕は問題ないものとされていることから理由づけることができます。

 あるいは、地主は契約書に「無断増改築禁止特約」があることを理由に 契約違反を言っているのかもしれません。このような「増改築制限特約」は、借地人の増改築によって借地権の存続期間や建物買取請求がなされたときに、地主に不利益を及ぼす恐れがある可能性があるので、その限りでは合理的な理由があるとして有効とされているのです。

 ご質問の場合は、建物の修繕の域を出ないものであり、増改築に当たるような場合とはいえません。

 

東借連常任弁護団解説

あなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より

 

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【Q&A】 マンションの管理費・共益費

  • 2011/11/18(金) 09:40:02

【問】 賃貸マンションの管理費、共益費には、どんなものが含まれるのでしょうか。 


【答】 貸ビル・賃貸マンションの場合、通常の家賃とは別に管理費・共益費というものが支払われるのが通例です。家賃という貸室の使用の対価であり、貸主の所得という意味であるのに比べて、管理費・共益費というと貸室以外の共用部分の維持管理費であって、貸主の所得とならなぬ実費であるという意味合いをもっているようです。

 しかし管理・共益費に何が含まれるか明確な基準はなく、結局その建物の実態に即して、貸主と借主が合意によって決められるものです。以下一般的な判断基準について述べてみます。

 まず管理・共益費は名称からいっても、建物の共用部分に関する費用が含まれます。したがって共用の玄関・廊下、階段の電気代・清掃代、エレベーターなど共用機械の動力代・維持費用、貸ビルの湯沸室・共用トイレの水道代・ガス代などがこれに当ります。管理人が置かれている場合の人件費も、管理・共益費に含まれるのが普通です。

 セントラル方式の冷暖房設備のある場合、それに要する費用は、別途負担とされることが普通でしょうが、入居のときその費用支払いがはっきりしていないときには、契約条件で冷暖房付と明示している以上、その費用は管理・共益費又は家賃に織り込み済みと考えるべきです。

 各室で使われる電気・ガス・水道代は、借主の生活・営業活動上消費されるものですから、その料金は家賃や管理・共益費には含まれません。ただそれらのサブメーターが各室におかれていない場合に、その階や貸室全体でかかった費用を、賃借面積や貸室使用人数に応じて割り振ったり、あるいは大まかな計算によって一定額で固定したりして、管理・共益費に含めることもあります。

建物の火災保険料については、貸主が保険契約者となり、家主の利益のために保険加入する以上、管理・共益費に一部として借主から徴収するいわれはありません。それは貸主が家賃収入から任意に支払うべきものです。

 貸ビル・賃貸マンションが、ガレージをもっている場合、それは必ずしも共用部分とはされず、したがって、その使用料・維持管理費は、管理・共益費には含まれないものです。分譲マンションなどに適用される建物区分所有等の関する法律によっても、ガレージや倉庫などは、当然には共用部分とはされていません。

 さてこのような管理・共益費の負担方法ですが、使用面積割、使用人数割、貸室による単純配分などの方法があります。一般的に面積割が合理的ですが、水洗便所衛生費などは人数割の方が公平です。これについては共用部分の実態や計算の便宜などを考えて貸主・借主で話し合って決める他ありません。

 なお管理・共益費については、、それが現実にどのように使われているか、各費目ごとに金額を知っておいた方がいいでしょう。そうすれば共用部分の維持・管理が不十分で、実際上貸主の所得となっているという事態を防止し、共益費を下げさせることもできますし、また共益費値上げの請求のあったときにも的確に対応できるでしょう。

 

東借連常任弁護団解説

Q&A あなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より

 

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【Q&A】 建物の滅失(火災・天災・地震)と借家権 

  • 2011/11/11(金) 18:35:38

【問】 火災の類焼によって借家が焼失してしまいましたが、借家権はなくなってしまうのでしょうか。災害の場合も同じですか。


【答】 建物が火災で焼失したり、地震で倒壊したりした場合を総称して「滅失」といいます。そして、建物が滅失すると、賃貸借契約の目的物がなくなったので、契約そのものも消滅するというのが一般的な解釈です。従って、一般的にはご質問の場合借家権はなくなるといわなければなりません。災害の場合も同様です。

 ただ、例外として「罹災都市借地借家臨時処理法」という法律があります。この法律は、もともと第2次世界大戦による戦災を対象としたものでしたが、その後、大規模な火災、地震、風水害その他の災害があった場合に、政令によって地区を定めて準用できることになっています。

 もし、災害があって、しかも政令によって法律が準用される地区とされますと、災害によって建物が滅失した時の借家人には、いろいろな優先権が与えられます。それを次に列挙します。

 (1)罹災建物の敷地又はその換地について、土地所有者や借地権者(借地人)がまだ建物を建てて使用していない場合には、政令施行の日から2年以内に、土地所有者に対して建物所有目的の借地を申出ることによって、他の者に優先して、相当な借地条件で借地権を取得できます。

 この場合、土地所有者が右の申出を受けた日から3週間以内に拒絶の意思表示をしなければ、その3週間経った時に申出を承諾するものとみなされますし、その拒絶には、正当事由がなければなりません(2条)。

 (2)罹災建物の敷地又はその換地に借地権者がいても、同じくまだ建物所有目的で使用されていない場合には、政令施行後2年以内に、その借地権の譲渡の申出をすることによって、他の者に優先して、相当な対価でその借地権の譲渡を受けることができます。

 この場合、譲渡の申出を受けた借地権者の取扱いは、(1)の土地所有者の場合と同様です。そして右の場合の借地権譲渡は、賃貸人が承諾しなくても、承諾したものとみなされます(3条、4条)。

 右の2つの場合に、借家人の取得した借地権は期間を定めない場合は10年、期間を定める場合は10年以上の契約をしなければなりません(5条)。

 (3)罹災建物の敷地又はその換地に、第三者が最初に建物を築造した場合、滅失当時の借家人はその完成前に借家の申出をすることによって、他の者に優先して、相当な借家条件で借家権を取得できます(14条)。

 以上が主なものです。右の借地または借家の条件について、当事者間の協議が整わないときは裁判所に申立をすれば、裁判所が「従前の賃貸借の条件、土地又は建物の状況その他一切の事情を斟酌して」(15条)定めてくれることになっています。

 また、1つの罹災建物について、数人の借家人がいて、みんなが右の申立をした場合で、その割合について当事者の協議が整わないときも、同じく裁判所が割当をすることができることになっています(16条)。

 

東借連常任弁護団解説

Q&A あなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より


関連
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【Q&A】 大災害時に借地上の建物が滅失

「地震に伴う法律問題Q&A」(近畿弁護士会連合会編)<PDF版> (絶版のため(株)商事法務HPで公開)

Q&A災害時の法律実務ハンドブック改訂版(平成23年6月発行)(関東弁護士会連合会編集)(新日本法規出版株式会社)

罹災都市借地借家臨時処理法の改正に関する意見書
日本弁護士連合会  2010年10月20日

 

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【Q&A】 「更新料支払特約」

  • 2011/10/25(火) 18:32:30

【問】 契約書に「更新する場合は更新料を新家賃の1か月分支払うこと」と書いてあります。この場合、更新料を支払わなければ更新できないでしょうか。


【答】 更新料というのは、契約期間の定めがある建物賃貸借において、契約期間が満了し更新するときに、借家人から家主に支払われる金銭です。

 建物賃貸借契約は、契約期間が満了しても、当然には終了するものではなく、家主に、賃貸借契約を終了させるべき正当の事由がなければ、前の契約と同一の条件で更新されたものとみなされています。つまり、家主が建物の明渡を求めるには、正当の事由が必要であり、これがない限り、契約期間満了後も、借家人は建物を今までと同様賃借していくことができるのです。

 結局契約の更新に際して、更新料というのは、法律上何らの定めもなく、更新料を請求する根拠はありません。

 ところが、実際には、借家契約の更新に際して、更新料の支払いが行われているのは、一部の悪質な家主が、借家人の弱い立場に付け込んで取り立てて来たからにほかなりません。

 更新料の性格については、賃料の前払い的なものとみる考え方や、賃料の後払いとみる考え方あるいは更新を円滑にするための安心料とみる考え方がありますが、いずれにしても納得できる理由づけとなっていません。

 ところで、最近、契約書において、あらかじめ、更新時には更新料を支払う旨の特約を付けた場合が増えてきています。このような更新料支払い約束のある場合、更新料を支払わなければ更新できないかが問題となります。

 この支払い約束の効力については、本来、契約更新に当り、家主に何らの正当の事由がないのに、更新料支払いという経済的な負担を強制することになるので、借家法6条(借地借家法30条)により借家人に不利な特約として無効というべきです。あるいは、法定更新の場合には、借家人は、何らの経済的負担なくして更新の効果を受けることができるとする借家法の趣旨からして、その支払い約束は、法定更新の場合には適用がないというべきです(最高裁昭和57年4月15日判決)。

 しかしながら、判決の中には、支払い約束した更新料の額が、家賃の1〜2か月分程度であれば支払約束を有効とするものがあり、不払の場合、「更新料は賃料都は法律的には別個であるから」賃貸借契約の解除原因とならないとする判決(東京地裁昭和45年2月13日判決)と「更新料の支払い義務は賃借人としての重要な債務であるから」賃貸借契約の解除原因となるとする判決(東京地裁昭和57年10月20日判決)とがあります。

 後者の場合でも更新料不払いがあっても家主との間の信頼関係を破壊したと認められない限り契約解除は認められませんので、期間満了時には、家主との間で、故意に協議を回避するようなことをせずに誠実に協議をする必要があります。

 

東借連常任弁護団解説

あなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より

 


関連判例
 嵋…蟾洪靴両豺隋賃借人は、何らの金銭的負担なくして更新の効果を享受することができるとするのが借家法の趣旨であると解すべきものであるから、たとえ建物の賃貸借契約に更新料支払の約定があっても、その約定は、法定更新の場合には、適用の余地がない」(東京高裁昭和56年7月15日判決東高民時報32・7民166)

◆嵋楫鏃物賃貸借契約における更新料支払の約定は、特段の事情の認められない以上、専ら右賃貸借契約が合意更新される場合に関するものであって法定更新された場合における支払の趣旨までも含むものではない」(最高裁昭和57年4月15日判決 昭和56年(オ)第1118号)

 

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【Q&A】 「家賃を滞納した場合」

  • 2011/10/11(火) 18:29:02

【問】 月末に、うっかりしていて家賃を支払うの忘れました。家主は、契約書の「1か月たりとも家賃を滞納した場合は催告なく契約を解除できる」という条項を示して明渡を迫ってきました。応じなければならないでしょうか。


【答】  借家契約は、家賃を家主に払ってその対価として借家人が借家を使用するという契約ですから、家賃の支払いは借家契約の最も重要な部分です。従って、一般的に、家賃の不払は家主が借家契約を解除して明渡を求める大きな理由となります。

 しかし、借家人の側から言いますと、長い間借家をしていれば、何かの理由で1回や2回家賃の支払いができなかったということは有り得ることです。しかも、借家をしてそこで生活し、あるいは生活のための家業をしているわけですから、1回や2回家賃の支払和なかったという理由で簡単に借家契約が解除され明渡が認められたのではたまったものでありません。

 このように、建物の賃貸借は、売買などと違い、長い期間にわたる継続的な関係の上に成り立ち、そこで生活や営業が営まれているわけですから、そうした関係の中で、家主と借家人の権利義務を見ていかなければならないのは当然です。

 従って、家賃の不払が借家契約の解除の理由になるかどうかについても、継続的な契約関係の中で家主と借家人の信頼関係が破壊されたかどうかを基準にして考えていく必要があります。

 では、どのような家賃の不払が、信頼関係を破壊し借家契約解除の理由になるのでしょうか。 

 例えば、裁判所の判決を見ると7か月分の家賃を延滞した例で、延滞の原因にやむを得ない事情があり、催告期間経過後数日で延滞した家賃を提供していることなどを考慮して解除を認めなかった判決(神戸地裁昭和30年1月26日判決)がある反面、4か月分の家賃を延滞した例で、借家人側に不信行為があった場合に解除を認めた判決(東京地裁昭和34年4月8日判決)もあるなど、単純に家賃を延滞した月数だけで形式的に解除ができるかどうかが判断されるわけではありません。

 結局、家賃の不払で借家契約が解除されるかどうかは、不払の月数だけではなく、不払をした事情やそれまでの借家関係(例えば過去に不払をしたことがあるかどうかなど)を総合的に考慮し、信頼関係の破壊といえるかどうかを判断して決定されることになります。

 あなたの場合、家賃の不払が信頼関係を破壊したとは言えませんので、家賃を持参し(または送金し)、家主が受け取りを拒否した場合は、供託すればよいわけです。

 なお、あなたの場合、家賃の不払があったときは催告なしに借家契約の解除ができるという特約(無催告特約といいます)があるようですが、このような無催告特約は、催告なしで解除しても不合理とは言えないような事情がある場合には無催告で解除権を行使することが許されるという意味の約束で、その限度でのみ効力をもつとされています(最高裁判所昭和43年11月21日判決)。この判決に照らすと、あなたの場合、家主の催告なしの解除自体有効とは言えません。

 

東借連常任弁護団解説

Q&A あなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より

 

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【Q&A】 「値上げ請求で家賃の受取りを拒否された場合」

  • 2011/09/20(火) 18:20:26

【問】 家主に今までの家賃の2倍の値上げを通告され、「とても払いきれない」と言ったところ家賃を受取ってもらえず、4か月も溜まってしまいました。どうしたらよいでしょうか。


【答】 借家人が家賃をもって行っても家主が受取らないことがよくあります。あなたの場合のように、家賃値上げを要求して要求額どおりでなければ受取らないこともありますし、明渡を要求して受け取らなかったり、特別に理由も言わないで受取らないことさえあります。

 家賃を支払うことは借家人の最も基本的な義務ですから、家主の方では受取るのに借家人が支払わなければ、借家人は家賃の支払い義務を果たしたことにならず、借家契約を解除されても仕方がありません。

 反対に、借家人が家賃を払おうとするのに家主がこれを受取らなければ、借家人は家賃の支払い義務を怠ったとはいえず、家賃滞納を理由に借家契約が解除されることはありません。家賃の値上げを請求された場合でも、借家人としてはその値上げの額を争い、値上げの額が裁判で決定されるまでは、自分が相当と考える家賃(今までの額でも構いません)を支払っていればよいのですから(借地借家法第32条2項)、借家人がその家賃を支払おうとするのに家主が受取らなかった場合、借家人が責められることはありません。

 そうすると、家賃を受取らなかった場合には、そのまま放っておいても構わないものでしょうか。確かに、理屈の上では前で述べたように構わないのです。しかし、現実にはそこに種々の問題が生じ、家主に不当な口実を与えることにもなりかねません。そこで、こういう場合には家賃を供託すれば家賃を支払ったと同じように取扱うという制度があります(民法494条)。

 供託の方法は簡単です。これまで家賃を家主に持って行ったり送金していた場合(持参債務)は家主の現住所を管轄する法務局又はその出張所に供託します。また、家主が家賃を取りに来ていた場合(取立債務)は借家人の現住所を管轄する法務局又は出張所に供託します(民法484条)。

 法務局には、供託用紙が備えてありますから、それに必要事項を記載し、供託金と80円切手を添えて窓口へ提出すればよいのです。

 ところで、どんな場合でも供託をしておけば安心だというわけではありません。供託が有効であるためには、借家人が家賃を現実に提供したのに家主がこれを拒絶したという前提事実が必要です。

 よく、どうせ受取ってもらえそうもないからすぐ供託しましたということを聞きますが、このような供託は無効で何の意味もありません。この提供とは、持参債務の場合は家主に家賃を持参することであり、取立債務の場合は支払いの準備をし、その旨を家主に通知することです(民法493条)。そのうえで家主が受取らなかったり、取りに来ないかった場合に、初めて供託することになります。1度この手順を踏んでおけば、次の月からは、家主の態度が変わらない限りいちいち家主に家賃を持参したり、家主に通知したりする必要はありません。

 

東借連常任弁護団解説

Q&A あなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より

 


 

借地借家法
借賃増減請求権
第32条 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

 建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年1割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。

民法
第494条 
債権者が弁済の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、弁済をすることができる者(以下この目において「弁済者」という。)は、債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れることができる。弁済者が過失なく債権者を確知することができないときも、同様とする。

 

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【Q&A】 「家賃値上げ請求」

  • 2011/09/06(火) 18:17:47

【問】 借家契約の更新のたびに家主から家賃の大幅な値上げを請求されて困っています。どうすればよいのでしょうか。


【答】 家賃は、家主と借家人との合意で自由に決めることができます。その額に法律上の制限はありません。家主が家賃の値上げを請求してきた場合にも、家主と借家人の間で話合いがまとまれば、家賃はそれで決定されます。

 問題は、家主からの値上げ請求に対して借家人が納得できない場合です。借地借家法は、家賃の値上げが請求できる場合として、‥效呂箏物に対する租税その他の負担の増加、土地や建物の価格の上昇その他の経済事情の変動、6疥戮硫板造犯羈咾靴童醜圓硫板造不相当に低くなったとき、の3つの場合を挙げています(32条1項。この条項は借地借家法施行前からの借家契約にも適用されます)。,らのいずれかの場合に当り、現行家賃が不相当に低くなっていなければ、家主は値上げを請求することはできません。

 なお、旧借家法の場合は、△痢屬修梁召侶从兒情の変動」という言葉はありませんでした。借地借家法制定の国会審議の中で、政府は、この意味について、物価や一般国民の所得、労働者の平均賃金などの変動のことで、これまでの家賃に関する裁判実務や鑑定実務で考慮されてきた要素に過ぎないから、その内容は旧借家法と全く変わらず、旧借家法の場合よりも値上げ幅が大きくなることはないと述べています。

 借家期間が2年とか3年とかの短い期間の場合には、この期間は家賃の据え置き期間と解釈されますから、家主はこの期間は値上げを請求することはできません。逆にいいますと、家主にとってはその期間が切れたときに値上げのチャンスがあるわけで、あなたの場合もそのケースです。しかし、前記のように、その場合でも,らのいずれかの場合に当り、現行家賃が不相当に低くなっていなければ値上げはできません。家主の言い分にそのまま応じることはありません。

 値上げ額について家主と借家人の間で意見が一致しないときは、借家人が相当と考える額(現行家賃を下らなければよいのです)を支払っていれば十分です(32条2項本文)。

 借家人が相当と思う家賃を払おうとしても家主がその額では受取れないといって受取りを拒否した場合には、直ちに供託することが大事です(供託の前に必ず1度は家主に家賃を持参する必要があります)。供託をしておけば、家賃の不払を理由に家主から借家契約を解除されることもありません。

 交渉がまとまらなければ、家主は裁判所に申立をすることになるでしょうが、最終的に裁判で決まった家賃の額が供託した額より多い場合には、その差額に年1割の利息を付けて家主に払うことになります(32条2項但書)。

 

東借連常任弁護団解説

Q&A あなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より

 

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【Q&A】 「契約の更新」

  • 2011/08/22(月) 18:10:17

【問】 借家の契約期間が満了したので家主が出ていってくれと突然言ってきました。どうしたらいいでしょうか。


【答】 家主の言い分は、借家契約の更新を拒絶するから借家を明渡してくれということです。家主が借家契約の更新を拒絶する場合、次の要件を満たさなければ更新拒絶はできません。

 第1に、家主は借家期間が満了する1年前から6か月前までの間に借家人に対して更新を拒絶する旨の通知をしなければなりません。借家契約でこの通知の期間を短縮するという約束をしても家主ついては無効です(借地借家法26条1項、同法30条)。

 第2に、第1で述べた更新拒絶の通知をしても、借家人が借家期間満了後も依然として借家を使用している場合は、家主は借家人に遅滞なく異議を述べなければなりません(借地借家法26条2項)。

 第3に、家主に自分の方でどうしてもその借家を使用しなければならない等の正当事由が必要です(借地借家法28条)。この正当事由については【Q&A】 「正当事由とは何か」を参照して下さい。この正当事由は、更新拒絶の通知をした時から借家期間満了の時まで存在しなければなりません。

 家主の更新拒絶がこれら3つの要件満たさない場合には、借家契約は自動的に更新され、前の契約と同じ条件で契約をしたものとみなされます(更新が確定したものとして取扱われる)。これを法定更新といいます。ただし、借家期間については例外で更新後の借家契約は期間の定めのない契約になります(借地借家法26条)。

 ご質問の場合、借家の期間満了後に家主が突然出ていってくれといてきたというこのですから第1の要件を満たしておらず、借家契約は法定更新されています。家主の要求に応じる必要はありません。

 ただ、家主が法定更新後に明渡を求めた場合には、借家契約の解約の申入れと考えられます。なぜなら家主の明渡請求には解約申入れの意味もあるというのが判例(最高裁判所昭和36年11月7日判決)で、法定更新後の借家契約は前記のとおり期間の定めのない契約になり、期間の定めがない場合には家主はいつでも解約の申入れをすることができるからです。

 では、家主から解約の申入れがされると借家契約はどうなるのでしょうか。解約の申入れが次の要件を満たすと、借家契約は解約申入れの日から6か月後に終了することになります(借地借家法27条1項)。

 第1に、解約申入れから6か月経った後も借家人が依然として借家を使用している場合は、家主は借家人に遅滞なく異議を述べなければなりません(借地借家法27条2項)。

 第2に、更新拒絶の場合と同じように、家主に正当事由がなければなりません(借地借家法28条)。この正当事由は、解約申入れのときから6か月間存在しなければなりません。

 これら2つの要件を満たさない場合、借家契約は終了せずに続いていくことになります(借地借家法27条2項)。

 

東借連常任弁護団解説

Q&A あなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より 

 


借地借家法
建物賃貸借契約の更新等
第26条 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。 

 前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。

 建物の転貸借がされている場合においては、建物の転借人がする建物の使用の継続を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして、建物の賃借人と賃貸人との間について前項の規定を適用する。

 

解約による建物賃貸借の終了
第27条 建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から6月を経過することによって終了する。

2 前条第2項及び第3項の規定は、建物の賃貸借が解約の申入れによって終了した場合に準用する。  


建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件
 第28条  建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

 

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【Q&A】 「敷金の返還」

  • 2011/08/08(月) 18:07:23

【問】 借家を明渡したのですが、家主は、畳の表替え・壁の塗替え(壁紙の張替え)費用が掛かるからと言って敷金を返してくれません。このような場合には敷金を返す義務は無いのでしょうか。


【答】敷金は、借家契約に際して、借家人の賃料債務その他の債務を担保する目的で、借家契約が終了した際に借家人の債務が残っていれば、その額を差し引いた残額を、債務がなければ全額を借家人に返すという約束で、借家人から家主に支払われるお金です。

 敷金が担保とする債務とは、借家人が家主に対して負う一切の債務です。

 問題は「畳の表替え・壁の塗替え(壁紙の張替え)費用」が借家人が負担すべき債務と言えるかどうかです。

 民法は「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」(民法606条1項)として、家主に修繕義務を課しています。畳の表替えや壁の塗替え(壁紙の張替え)が修繕に当ることは明らかです。

 他方、民法は、借家人に対して「善良なる管理者としての注意義務」(これを善管注意義務といいます)をもって借家を使用するよう求めています(民法400条)。

 畳の表替え・壁の塗替え(壁紙の張替え)は、普通の使い方で住んでいても一定の年月が経てば必要になる性質のものです。したがって、その必要が生じたからといって、それを借家人の落度、つまり借家人の善管注意義務違反であるということはできません。普通の使い方をしていたのであれば、その費用は家主が負担すべきものです。家主の言い分は誤りですから、敷金全額を返すよう請求できます。

 では、畳の表替え・壁の塗替え(壁紙の張替え)が、借家人の使用上の落度から必要になった場合はどうでしょうか。この場合は、借家人に善管注意義務違反があるということになりますから、家主はこれによって被った損害、すなわち畳の表替え・壁の塗替え(壁紙の張替え)費用を借家人に請求することができます。借家人が返してもらえるのは敷金からその費用を差し引いた残額だけということになります。

 ところで、敷金を返さなければいけない家主の義務(敷金返還義務)と借家を明渡さなければいけない借家人の義務(目的物明渡義務)地は同時履行の関係にあります。同時履行の関係とは、互いの義務を同時に果たすべき関係のことです。ですから明渡す前に家主との間で反感されるべき敷金の金額を確定したうえで、その敷金の返還を受けるのと同時に明渡に応ずるという姿勢を取ることが必要です。

 なお、借家契約の中に、一定の事由がある場合には敷金を返さない、すなわち没収するという特約があることがあります。このような特約があっても、借家人に落度がない場合にまで敷金を返さないということは無効ですから、諦めないで下さい。

 

東借連常任弁護団解説

Q&A あなたの借地借家法

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